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文学作品より当時学校の様子、学生生活の輪郭を読み解く。

日本女子大学 | 『国民教育の複本位』大隈重信 -1

 申すまでもなく富強は国家の素望《そぼう》で在って、智識性格は実にこれが根本であります。されば真個《しんこ》の富強は決して一躍して獲《え》られるべきものではない、必ずや深くその根本を培養し、その素養を確実にせねばなりません。而《しか》してその根本を培養し、その素養を確実にするものは実に教育である。されば真個の富強とは教育の基礎ある富強でなければならぬと謂《い》わねばなりますまい。


 明治五年学制発布|爾来《じらい》、我が邦《くに》教育事業|駸々乎《しんしんこ》として進み、上《うえ》、大学より、下《した》、幼稚園に至るまで、学校の設備大いに整頓し、教授の方法|頗《すこぶ》る発達し、明治二十三年教育勅語を下《くだ》し賜うに及んでや、徳育の方針ここに一定し、教化|益々《ますます》四海に普《あまね》く、明治二十七、八年|役《えき》に至って教育の効果はますますその光輝を発《はな》ち、内外の人士|嘆美《たんび》せざるはなき盛運に向いました。けれども過去二十有余年間の明治教育というものは、男子教育に偏《へん》しはしないかとの嫌いがありまして、未だ以て国民の教育が完備したと申す事は出来ません。


初出:1897(明治30)年3月25日



文学作品より当時学校の様子、学生生活の輪郭を読み解く。


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